Dream薄桜鬼

□髪飾り
1ページ/7ページ

――桜も散り終え、葉が青々と茂っている。


私は千鶴ちゃんと一緒に街に来ていた。


「うわぁ見て見て!この簪、綺麗だよ」


「琥珀さんなら似合うんじゃないですか」


千鶴ちゃんが私が指した簪を手にとって、私の髪に寄せた。


私はそのつもりじゃなくて、千鶴ちゃんに合うものなのにと寄せられた簪を取り戻し、逆に彼女の髪に寄せた。


「えぇ!私なんかが…」


「私の目に狂いはないっっ!!!ご主人ー、これいくらですか?」


まだ状況を掴みきれていない千鶴ちゃんをよそに、私は店の主を呼んだ。


「へぃ、いらっしゃい!可愛い嬢ちゃん達だねぇ」


そろばんを弾きながらニコニコと迎えてくれた。


「ご主人!この簪、彼女に合うと思いません??」


「よく似合うじゃないか!!ちょっとまけとくよ」


千鶴ちゃんは耳まで真っ赤になって照れた。


「恥ずかしい!」


通常より安く手に入れる事が出来た。かなりお手頃だ。
店をあとにしようとしたとき、店の主に呼びとめられた。


「待ってくれー!」


「「はい?」」


主は二つの木箱を取りだした。
中にはお揃いの、しかしどこかが違っている髪飾りがあった。


「2人ともこの店には初めてだろう?贔屓にしてもらおうと思って」


その髪飾りを私たちにと渡してくれた。


「そんな!これ高いんじゃないですか?」


「そこまでお金が…」


心配する私たちをよそに主は告げた。


「それは私が練習で作ったものだよ、まだ売りだしてはないけどね」


まだ非売品の髪飾りをくれるというのだ。
本当にいいのか、気が気でない。


「それに、傷が入ったり形がダメだったりで…でもほとんど分らない奴だよ」


とても綺麗というか美しい、という方が正しい。


「店の宣伝にもなるしー、嬢ちゃん達にあげるよ」


「ありがとうございます!」


「大切にしますね!!」


そうして、私たちは店を後にした。

 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ