短編

□花で伝える
1ページ/2ページ


病院に行くために速足で歩く。
今日は休日で部活はなし。久しぶりに兄さんとたくさん話すことができる日だった。



病室の扉を開く。
兄さんが笑いながら迎えてくれた。


「いいタイミングで来たね。彼も来てるよ」

「え……」


兄さんのいう彼が誰なのか簡単に分かってしまう自分が悔しい。
姿がない所を見れば、花瓶の水でも取り換えているんだろう。
なんで来てるんだと思うが、今に始まったことではないので気にしないことにした。


「…………(ニコニコ」

「…兄さんなんでそんなに楽しそうなの?」

「ん?気にしなくていいよ」


笑いながら見つめられて気にしない奴はいないと思う。
不思議に思っていると、ガラっとドアが開けられた。


「あ!京香、来てたんだ!」


立っていたのは、花瓶を持っている天馬。
パァっと嬉しそうに天馬は笑う。


「? お前その花……」


天馬が持っている花瓶は二つあった。
一つはいつも兄さんの病室にある見慣れたもの。
もう一つはとても小さくて、見た事のない花が生けられていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ