短編
□花で伝える
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病院に行くために速足で歩く。
今日は休日で部活はなし。久しぶりに兄さんとたくさん話すことができる日だった。
病室の扉を開く。
兄さんが笑いながら迎えてくれた。
「いいタイミングで来たね。彼も来てるよ」
「え……」
兄さんのいう彼が誰なのか簡単に分かってしまう自分が悔しい。
姿がない所を見れば、花瓶の水でも取り換えているんだろう。
なんで来てるんだと思うが、今に始まったことではないので気にしないことにした。
「…………(ニコニコ」
「…兄さんなんでそんなに楽しそうなの?」
「ん?気にしなくていいよ」
笑いながら見つめられて気にしない奴はいないと思う。
不思議に思っていると、ガラっとドアが開けられた。
「あ!京香、来てたんだ!」
立っていたのは、花瓶を持っている天馬。
パァっと嬉しそうに天馬は笑う。
「? お前その花……」
天馬が持っている花瓶は二つあった。
一つはいつも兄さんの病室にある見慣れたもの。
もう一つはとても小さくて、見た事のない花が生けられていた。