短編
□とりあえず渡そう
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「これくらい溶かせば大丈夫か」
京香はキッチンでボウルの中に入っているチョコをかき混ぜている。
明日はバレンタイン。
いつも世話になっている人に感謝の気持ちを込めてチョコを贈ったり、好きな人に想いを伝えるためにチョコを贈ったりと男子も女子も忙しい一日である。
当然京香も人に渡すためにチョコを作っていて、その表情は真剣そのものだった。
「喜んでくれるかな…、天馬…」
ぽつりと呟いた京香は一旦作業の手を止めた。
天馬と京香は付き合っているので不安も何もない。それでも渡したらどんな顔をするのか、食べたらどんな事を言うのか楽しみな半面不安でもあった。
「よしっ、これで…完成、っと…」
ハート型のチョコを包み、綺麗にラッピングしていく。
メッセージカードを添えて、チョコ作りは終了した。
「……どんな顔して渡せばいいんだ」
恥ずかしくなると思ってもないことを言ってしまう京香である。
せめて少しでも素直になれるように心がけなくては。
まだ前日だというのに、その晩、京香は緊張して眠れなかった。
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