捧げもの

□どっちもどっち
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「倉間、いいかげんに返事しろ」


俺の、いや俺達の状況を説明しよう。
ベッドに寝転がり、壁の方を向いてまったく返事をしようとしない倉間が目の前にいる。
この状況を打破しようと、数分前から声をかけているが、悲しいことにまったく返事をしてくれない。


「く〜ら〜ま〜」

「…………」


これの繰り返しだ。

そもそもどうして倉間がこんなに不機嫌なのか分からない。
理由を聞こうにも返事をしてくれないと聞く事もできない。


「倉間!」

「…………」


少し強めに名前を呼ぶと、肩がビクッとはねた。
それでも返事は返ってこない。
ここまで徹底的に無視されてたら、段々悲しくなってくる。


「……まずお前の不機嫌の理由を教えろよ」

「……嫌です」

「お前な……」


もともと頑固な性格からか、中々話そうとはしない。
悲しいを通り越して、イライラしてきた。


「話さないと腰立たなくなるぞ?」

「!!?///」


バッと倉間が体を起こそうとしたが、もう遅い。
俺の下には倉間が顔を真っ赤にして肩を押さえられている。


「これで逃げられないな?観念して話せ」

「〜〜〜〜〜、昨日!学校で、告白されてたでしょう!」


…………それで怒ってるのか、こいつ?
確かに昨日、女子に告白された。美人で有名な子だったが、俺にはそいつ以上に可愛い恋人がいるのでもちろん断った。
気付かなかったが、それを倉間が見ていたらしい。


「南沢さん、断ってたけど……、いつか、俺のこと嫌いになるんじゃないかって、不安になって……」


やばい、可愛い、ホントに可愛い。
涙目になって、あるはずのないことに不安を覚えて。
そこまで俺のこと想ってくれてるってことだろ?
嬉しすぎて思わず笑みが浮かんでしまう。


「馬鹿だな、典人」

「は、え!?」


いきなり下の名前で呼ばれて驚いている典人に、これまたいきなりキスをした。
最初は暴れていたが、少しずつおとなしくなってくる。
力が抜けきった所で、ゆっくりと離れた。


「お前のことを嫌いになる?あり得ないね。誰に告白されようが、俺はお前を選ぶ」

「南沢、さん……」

「名前」


もう一度キスをしようと、顔を近づける。
なぁ、典人。お前は知ってるか?俺の方が不安なんだぜ。
お前が他の奴らと話してたり、俺のことを名前で呼んでくれなかったり、そんなことでいつも不安になる。


「篤志、さん」

「よくできました」


もう一度キスをする。
甘い甘い、幸せなキスだ。







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