頂きもの

□シエン様から
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 薄暗い路地裏。何人かの男の声と鈍い音、それから何度か咳き込む声と、小さな子供がすすり泣く声が響いていた。

 腹のあたりが鈍く痛む。口の中は、鉄の味がして気持ち悪い。さっき殴られたときに切ったようだ。

 大人げない奴らだ。そう思いながら、剣城は目の前にいる不良たちを睨み付けた。


「ンだよ、その顔はよォ!あぁ?!」

「なめてんのか?このガキがよっ」


 一人がまた殴りかかってくる。かろうじて避けたが、ほかの男が繰り出してきた蹴りに対応ができず、細い路地裏を転がった。


「っう…げほっごほっ…」

「……お、おにいちゃん…だいじょうぶ…?」


 サッカーボールを抱えて縮こまり、泣いていた男の子が俺を見て心配そうに声をかけた。


「っああ…。…危ない、から…早く、逃げろ…。」

「で、でも!ほ、ほんとはぼくがわるいのに…ぼくがボールぶつけちゃったから…うぅ…。」


 そう言って、男の子はまた泣き出した。


「泣くな…お前は悪くない。俺は大丈夫だ、だから早く逃げろ。」


 そうは言っても、こんなにボロボロの姿じゃ何の説得力もない。男の子を抱えて逃げたいが、あいにくと力が入らない。もっと早くにそのことに気が付いていればよかった。


「さっきから何コソコソやってンだよ!!」

「っ…」


 こそこそと話していたことが気に食わなかったのか、一人が声を荒らげて蹴りかかってきた。靴の先が鳩尾に入る。


「ゲホッげほごほッ…う、ぐぅ…。」

「お、おにいちゃ」

「大丈夫だ、大丈夫だからっ」


 頼む、そんな悲痛な声を出さないでくれ…。


「何が大丈夫だ、あぁ?!」

「ふざけたことぬかしてンじゃねえよ!!」

「もとはと言えはそこのちびっこいガキが悪りィんだ、そっちのやつも狙え!!」

「なっ…!!」


 どうやら上下関係があるらしい。その言葉を聞くや否や、今まで俺を殴っていた不良たちが一斉に男の子に向かう。


「ひっ…うぅ…ごめんなさ……、っえ?お、にいちゃ」


 多勢に無勢、俺一人じゃかないっこない。せめてこの子に怪我はさせまいと、男の子を抱きしめて目を固く瞑った。




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