頂きもの
□シエン様から
1ページ/3ページ
薄暗い路地裏。何人かの男の声と鈍い音、それから何度か咳き込む声と、小さな子供がすすり泣く声が響いていた。
腹のあたりが鈍く痛む。口の中は、鉄の味がして気持ち悪い。さっき殴られたときに切ったようだ。
大人げない奴らだ。そう思いながら、剣城は目の前にいる不良たちを睨み付けた。
「ンだよ、その顔はよォ!あぁ?!」
「なめてんのか?このガキがよっ」
一人がまた殴りかかってくる。かろうじて避けたが、ほかの男が繰り出してきた蹴りに対応ができず、細い路地裏を転がった。
「っう…げほっごほっ…」
「……お、おにいちゃん…だいじょうぶ…?」
サッカーボールを抱えて縮こまり、泣いていた男の子が俺を見て心配そうに声をかけた。
「っああ…。…危ない、から…早く、逃げろ…。」
「で、でも!ほ、ほんとはぼくがわるいのに…ぼくがボールぶつけちゃったから…うぅ…。」
そう言って、男の子はまた泣き出した。
「泣くな…お前は悪くない。俺は大丈夫だ、だから早く逃げろ。」
そうは言っても、こんなにボロボロの姿じゃ何の説得力もない。男の子を抱えて逃げたいが、あいにくと力が入らない。もっと早くにそのことに気が付いていればよかった。
「さっきから何コソコソやってンだよ!!」
「っ…」
こそこそと話していたことが気に食わなかったのか、一人が声を荒らげて蹴りかかってきた。靴の先が鳩尾に入る。
「ゲホッげほごほッ…う、ぐぅ…。」
「お、おにいちゃ」
「大丈夫だ、大丈夫だからっ」
頼む、そんな悲痛な声を出さないでくれ…。
「何が大丈夫だ、あぁ?!」
「ふざけたことぬかしてンじゃねえよ!!」
「もとはと言えはそこのちびっこいガキが悪りィんだ、そっちのやつも狙え!!」
「なっ…!!」
どうやら上下関係があるらしい。その言葉を聞くや否や、今まで俺を殴っていた不良たちが一斉に男の子に向かう。
「ひっ…うぅ…ごめんなさ……、っえ?お、にいちゃ」
多勢に無勢、俺一人じゃかないっこない。せめてこの子に怪我はさせまいと、男の子を抱きしめて目を固く瞑った。
→