頂きもの
□Like.家族
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「剣城!」
「…」
放課後、部活が終わり疲れ切った顔をしている京香に対し、天馬はまだまだ元気が有り余っているかのように大きな声をあげた。
ちなみに、京香は慣れているのでまたか、とうんざりした視線を天馬に送った。天馬もまた慣れているので気にしない。
「今日信助も一緒に帰っていい?」
「西園…?…いいけど…」
「本当!?ありがとう!信助ーっ!」
全く、騒がしい奴だ。
と心の中では毒を吐きながらも、実はすごく嬉しかったりする。つまり、人数が増えて盛り上がる分なら全く支障はないということだ。
「剣城ー!お待たせ!」
しばらくすると西園と天馬が満面の笑みで走ってきた。
少しばかり、恐怖を感じるのは俺だけだろうか。
「よし、帰ろう。京香!」
「あぁ。…?」
「??」
帰ろうとすると、西園が急に手を差し出してきた。
京香が不思議な感情を含んだ目で見ていると、西園もまた不思議そうな顔でいた。
「手、繋ごうよ!」
「!?……」
ごく一般的な中学生なら、誰だって拒むだろう。
しかし、京香は愛には疎い少女だ。
小さい頃から家でひとりぼっちだった為、愛される行為には慣れていなかった。
しかし、それは逆接的に言うと、京香はどんな行為でも拒むことなく受け入れる、と言うことだ。
「…あぁ」
「えーっ!ずるい!俺も俺もーっ!」
「わっ…!」
ずるいと感じた天馬は京香の空いている方の手を繋ぎにきた。
京香は天馬は恋人として見ているので、天馬に関しては普通に手を繋げなかった。
「…っ」
「京香の手、小さーい!かわいい!」
「…」
しかし、天馬は満面の笑みを浮かべていた。
その笑顔を見て、京香は緊張などぶっ飛び、心の底から幸せがふつふつと沸き上がってきた。
(俺は…幸せ者になったな…)
「ねぇ、今日俺ん家でご飯食べようよ!」
「いいね天馬!いくいく!」
「ちゃんと親御さんに連絡入れろよ」
「わかってるって!」
「よぉ〜っし!誰が一番に木枯らし荘に着くか競争だあ!」
「よーいドンっ!」
「あ、こら!天馬、西園!」
言葉では怒っていながらも、
京香の笑顔は消えることがなかった。