novel

□秘密の願い事。
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そんなリンクにギラヒムは苦笑いする。

「悪かったよ。いきなりキスして」
「むぅー…」

謝ってもリンクの機嫌は直りそうにない。
だが早くしないと…

「リンク君、このままだと日が暮れちゃうよ」

太陽は西の空に傾いていた。

「え…あっ…本当だ!急がないと…!」

リンクの変わりようにギラヒムは笑う。

「ギラヒム…!日が沈んじゃう…!」
「そんなに早く太陽は動きはしないよ。それで、どこに持っていくんだい?」
「大樹の上!」

大樹のてっぺんを指差し急いで上ろうとするリンクにギラヒムが声をかける。

「急がなくても大丈夫だよ」
「…え?」

不思議そうにギラヒムを見る。
そんな姿にギラヒムは笑い、リンクを抱き寄せて指をパチンッと鳴らす。

するとあっという間に大樹の上に到着した。

「ワタシの能力を忘れられちゃ困るな」
「…すごい……」

リンクが感激してる間に笹を大樹に立てかける。

「ほら、吊そう」
「うん!」

さっきの不機嫌なリンクはどこかへ行ってしまった。










「リンク君は何て書いたんだい?」
「え…そりゃもちろん…」

リンクは短冊を得意気にギラヒムに見せる。

「"たくさん寝られますように"…?」
「うん。今以上にもっともっと寝られたらなぁって思って!」

本当に価値観は人それぞれだな、とギラヒムは改めて思う。

「さぁ、どこに吊そうかな」
「僕、上の方がいい!」
「上の方って…リンク君届かないでしょ」
「う…うるさいな…っ」

残念ながら上は届きそうにない。
仕方がないので、ギラヒムが笹を横に持ちリンクが吊す形になった。


それからギラヒムも吊し、2人は笹の横に座り大樹にもたれている。

「見えるかな…天の川」
「今日はいい天気だし、きっと見えるよ…楽しみ?」

ギラヒムの質問にリンクは素直に答える。

「楽しみだよ。ギラヒムは?」
「もちろん楽しみさ。しかも今年は愛するリンク君と一緒に見られるんだから」
「ばか!」

それから、星が見えるまで2人で他愛もない話をした。



暫くするとリンクが嬉しそうに言う。

「あ…見えたよ、天の川!」

わぁっと歓声を上げてリンクは立って手を伸ばす。

「…何してるんだい?」
「星に手が届いたらいいなぁって!」

リンクの言葉にギラヒムは
そうだね、とだけ言った。


そして星を見て無邪気にはしゃぐリンクをギラヒムは後ろから抱きしめる。

「ギラヒム…!?」
「この季節でも…夜は冷えるからさ」

抱きしめられている腕にリンクは自分の手を添える。

「ありがとう…」





いつの間にかリンクは寝ていた。

ギラヒムはリンクの頭を撫でながら夜空をながめていた。


「これからも…リンク君が元気でありますように…」


ギラヒムが呟いた言葉は夜空へ溶けていった。

笹や短冊は風によって揺れている。

ふわっとギラヒムの前に1つの短冊が落ちてきた。
リンクが書いた短冊だ。

再び吊そうとリンクをそっと横に寝かして笹に手を伸ばす。

すると、短冊の裏に何か書いてあることに気づいた。

それを見てギラヒムは驚いたがすぐに笑顔になる。
そして何かを書き、それから吊した。

リンクが起きたら何を言おうか、
と考えを巡らせながら朝を待った。






"ギラヒムとずっと一緒にいられますように"
"もちろんだよ"




Fin.


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