novel
□雨の日。
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雨が降った…
小降りほど弱くなく、どしゃ降りほど強くない雨。
僕は雨は嫌いじゃない。
僕の中のこの気持ちを…たまに思う“勇者”でいることが辛くて嫌だという気持ちを…全部洗い流してくれる気がするから…。
どれほど…時間がたっただろう…
僕はずっと雨の中、ずぶ濡れで立っている。
そんな時、僕が背負っている女神の剣から光を放ってファイが出てきた。
『マスター、体力と体温の低下を確認。速やかに屋根のある所へ行き、体力の回復を行ってください。』
「…ありがと、ファイ」
いつも情報提供してくれているファイにお礼を言うと、ファイは僕の剣へ戻っていった。
ファイの言葉どおり僕は雨宿りができそうな所を探す。
目についたのは大きな木。立派に育っていて、横や縦に広がった葉の下はちょうど雨を防いでいる。
他に近くには建物らしきものはなかったから、僕はその木の下へと向かった。
「へっくし!!」
木の下へ着いた途端、僕はくしゃみをした。
びしょ濡れなので、体がずいぶん冷えきっている。
……寒い…
風邪でもひいただろうか…まいったなぁ…雨、止みそうにないし…
木に寄りかかりながら座り、厚い灰色の雲におおわれた空をボーっと眺める。
…ちょっと…寝ようかな…朝からずっと戦ってたからな…
そぅ思うと僕は、襲いかかってくる睡魔に負けて瞼を閉じた。