novel
□たまにはこんな日も…。
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びっくりした。
─昼───
俺はいつものようにフィローネの森を見回っていた。
いつから見回るようになったかは覚えていない。
けれど、こうしているとリンクに会える機会が増えるから。
だが、驚いた。
合う度に元気よく虫取りをしていたリンクが…
倒れていたから…
俺は言葉よりも体が先に動いていた。
「リンク…おいリンク!」
リンクの体を揺すっても起きる気配がない。
ずっと名前を呼んでると、リンクの背負っている女神の剣から光とともに精霊が出てきた。
そして俺に告げる。
『魔族長ギラヒム。マスターから体力の低下と体温の上昇を確認。速やかに体力回復を行ってあげてください』
「…敵であるワタシに頼むんだね」
『今日の貴方から殺気はうかがえません』
「…まったく…君は鋭いね…」
ため息混じりに言ってやる。
そしてリンクを自分の背中におぶる。
精霊は無表情な顔のまま、俺に礼を言う。
「リンク君は回復薬を持ってないのかい?」
木陰に行き、持っていた布を濡らしてリンクの頭にのせている時にふと思った。
『はい。先日、全部使いきりました』
「全部…ねぇ…」
『全部です』
いざという時のために常に持っとけよ…無茶な戦い方するんだから…
俺は心の中で説教した。
それから俺たちは黙り込む。
風と水の流れる音とリンクの荒い息遣いだけが聞こえる。
俺はリンクの頭を撫でながら沈黙を破る。
「…まだ子供なのに…勇者なんてね…。そりゃいろんな事溜め込んで体調も崩すよ」
『……ファイは…何もできませんでした…』
精霊が話し出す。
『いつもマスターは頑張っているのに…ファイは何のお役にも立つことができず…』
「……そ…なこと…ないよ……」
突然の声に俺も精霊びっくりした。