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□予感
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この路の向こうで逢える─そんな気がして俺は急いだ。

【予感】

春。何となく埃っぽくて、日向の匂いがする道を足早に行く。先を歩く人々の足元を、淡く立ち上る陽炎が揺らす。
俺は色々な事を考えて─思い出していた。

俺は、前世の記憶を持って生まれてきた。前世の俺が愛した人は、俺より先に、目の前で死んでいった。離れたく無かった。だから彼と約束した。
「生まれ変わっても捜し出してやる。次もその次も一緒にいよう」と。彼は微笑って逝った。

幸い(というのか分からないが)、俺は「前の俺」とほぼ同じ姿で生まれてきた。彼が見たら、すぐに気付いてくれるかも知れない。
彼がどんな姿で、どこにいるのか、もっと言えばこの時代にいるのかは分からない。でも、俺には分かる。もうすぐ逢える気がする。

角を曲がって進むと桜並木が続いている。雪のように花弁が舞い散る中、俺はふと視線を感じた。
その瞬間─風が吹いた。

花吹雪の向こうに、彼がいた。
「    」
微笑ったように見えた。


何か言ったようだが、どうでもいい。今すぐ傍に行くから。
気付けば俺は駆け出していた。

また愛し合える。
そんな予感がした。

《完》

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