OROCHI2夢
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「何か用でもあったのか?」
「いや、特には………」
「用ないのに探してたのか?」
酒呑童子の返答に、司馬昭は首を傾げた。
だが、それもおかしい事ではない。
「…ふと、どうしているのだろうと思った」
囁くように言ったこの言葉を聞いて、疑問符を浮かべていた司馬昭の表情は笑みに変わった。
「へぇ〜」
「………?何だ?」
「いや?仲良くやってんな〜と思って」
ニヤニヤと笑っている司馬昭を、酒呑童子は不思議な目で見つめる。
「ま、無理もないか」
葵に惚れるのも、と続けて呟いた司馬昭の納得した表情を見て、酒呑童子はまた疑問符を浮かべた。
「ある意味怖いもの知らずか。それだけ、強いとも言えるけどな」
「………私に接する事が、か…」
酒呑童子はふと視線を落とし、苦笑いのような笑みを浮かべる。
「でもま、葵の判断は正しいな。お前は恐れるような存在じゃない。すぐに皆も分かるだろ」
司馬昭の言葉に、酒呑童子は心が少し軽くなる感覚を覚えた。
「司馬昭も、私を恐れずこうして向き合ってくれる。私にはそれが、新鮮で………気持ちが、軽くなる。すまない、うまく表現できないが……」
この感情を上手く言い表せないもどかしさが身体中を巡る。
葵にもまだ伝えられていない。心が温かくなる、この感情を。
「お前自身も俺たちを恐れないしな。嬉しいと思ってくれるならそれで充分。お前にはちゃんと優しい感情があるって事だ」
明るい笑顔で司馬昭がそう言うと、酒呑童子は顔を上げて少し目を開いた。
「嬉しい…………か。嬉しいというのだな、この感情は」
心が温もる感覚、やっと言葉にできるその『嬉しさ』を、酒呑童子は心の中でぐっと噛みしめる。
「でも葵に対するお前の気持ちは、嬉しいだけじゃないだろうな。幸せとか、そういう感じだろ。見てるだけでわかる」
雰囲気が、葵といる時は少し違うからな。
そう続けた司馬昭は、またニヤニヤと笑っている。
「………私は、葵の笑顔が見たい、声が聞きたい。葵に傍にいてほしいと、傍にいたいと思う……。葵と居ると楽しくて、私の中の何かが満たされる。幸せ………幸せだ」
やっと、この感情の答えを知った、と酒呑童子は穏やかな笑顔を見せた。
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