無双過去夢
□You are mine
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私を見て。
ちゃんと愛して。
もう、泣かなくていいように。
「…………左近様。」
「左近様。」
背後から呼んでも返事は無い。
「…左近さ「葵。」
もう一度名前を呼ぼうとした時だった。
「今は仕事中だ。分かるだろう?」
振り返りもせず、書簡を見つめたまま愛しい人は言う。
「…………分かってます。」
あぁ、その書簡を奪って破り捨てたら貴方は怒るだろうね。私は嫌われちゃうだろうね。でも、破り捨てたいぐらいの気持ちだった。
振り向いてよ。
お願いだから。
「…………失礼しました。」
そう言って、私は部屋を後にした。
もう皆が眠りに就く頃だというのに、左近様が寝る気配は無い。
これで何度目だろう、一人きりで過ごした夜は。
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