無双過去夢
□愛しき人よ 〜明月〜
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思えばあの時、お互いが出会った時から歯車は動き出していたんだ――――――。
『愛しき人よ 〜明月〜』
身体中が痛む。
目を開けても、景色は歪んでいる。
体に視線を落とせば目の前は紅に染まる。どこに傷があるのかさえ分からない…………。
戦の途中、手薄だった本陣に伏兵が仕掛けられていたせいで俺は不意打ちを喰らった。
周りにいた味方の救援もあり、何とか逃げ出して来たものの此処がどこなのか、どうやって此処まで来たのかすら分からなくなっている。
遠くへ逃げすぎたかもしれない。逆に、まだ近くに兵がいるのかもしれない。
…それさえ判断できない。
思い出そうとしても、記憶は薄れていくばかり。
ただ、大きな木にもたれかかって荒い息をしている。
「ふん………あっけない死に様だな……………。」
観念したように笑い、他の味方は今頃本陣でどうしているのだろうか、などと考えながら俺は意識を手放した――――。