OROCHI2夢

□1
2ページ/3ページ












――――――――――










自分が何者か、知りたくはないか?










そう太公望に問いかけられ、酒呑童子は“自分”を見つけるべく、討伐軍へ加わった。


あのまま妖魔のもとにいても、自分が何なのかは見えてこないだろう。



















城の中に入り、ここにいろと言われた広い部屋で酒呑童子は一人、何をするでもなく胡座をかいて座っていた。

左腕がじわりと痛むのを感じ、ふと視線を移せば傷がある。
ふとした時に気付く痛みは、気付いてから強くなるものだ。

だが今の状況ではどうしようもないな、と思いながら酒呑童子は血を雑に拭った。
























「―――――――あ、の」







不意に、背後から声が聞こえた。

酒呑童子が振り向くと、小さな箱を持った見知らぬ娘―――――葵が立っていた。




















「脚と、腕………怪我されてますよね。手当ていたします」





落ち着いた声でそう言うと、葵は酒呑童子の横に座り、持っていた箱から薬や包帯を取り出した。




脚の傷口に薬を塗り、手際良く包帯を巻く。

できました、と小さくつぶやくと、葵は続いて腕の傷を見る。









薬を塗る葵の様子を、酒呑童子は無言で見ていた。





――――――いきなりやってきたこの娘は、どうやら人間らしい。
何者なのか、という疑問を抱いたが、それを聞く暇もなくこの娘は手当てを始めた。
娘からすれば私は異形の存在。なぜそのような者に近付き、傷を癒そうとするのか。





酒呑童子の頭の中には、いくつも謎があった。















「…………………お前は、私を恐れぬのか」






包帯を巻く葵に、酒呑童子は疑問を投げかけた。


その声を聞いた葵は手を止め、顔を上げて今まで傷口や包帯に向けていた視線を酒呑童子へ移す。


ふと、二人の視線がぶつかった。











.

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ