OROCHI2夢
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そして、二日後。
酒呑童子が討伐軍に加わった事は一気に知れわたり、興味を持つ者、恐れる者、危険視する者、それぞれ人の反応は様々。
そんな中、酒呑童子を恐れない葵は、珍しい存在だった。
first accession...
「太公望様!」
すでに陽は落ち、今は夜。
書物を持って部屋に向かっていた太公望は、後ろから名前を呼ばれて立ち止まった。
「葵か。どうした?」
振り返ると、葵がパタパタとこちらへ駆け寄ってきた。
「あのっ………!あの方、どこにいらっしゃるか知りませんか…?赤い髪の……ほら、角の生えた…………っ」
小走りで太公望のもとへ来たせいで息が荒い葵は、必死に酒呑童子の名前を思い出そうとする。
以前傷の手当てをした時に名前を聞いていなかった葵は、その後周りの仲間達が酒呑童子の事を噂しているのを耳にしただけで、名前がうろ覚えだった。
「酒呑童子の事か?」
「あっ!そうです!酒呑童子様!」
太公望に言われ、喉につかえた物が取れたような感覚に、葵は笑顔になった。
「奴がどうかしたか?」
「この前、怪我をなさっていたので手当てをしたんですが、そろそろ薬を塗り直して包帯も取り替えないといけないので…」
葵のその言葉に、太公望は表情には出さないが、少しの驚きを覚えた。
「昨日から探しているんですが、どうも見当たらなくて。太公望様ならご存知かな、と」
「…………奴に、手当てをしたのか」
「?はい」
「なぜ?」
「なぜって…………怪我をされてたから手当てするのに、特に理由など………」
太公望からの質問を、葵は不思議に思いながら答えた。
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