OROCHI2夢

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─────────討伐軍の中では、遠呂智に対抗する手段を考え、日夜研究が進められていた。

大きな脅威となっているあの大蛇を退ける術は、と。






そんな中、太公望の読みは間違っていなかった。

妖魔軍の中で見つけた酒呑童子という存在は、やはり一筋の光となる。
だがそれは同時に、彼自身に負担を追わせる事となり──────────。

















first desire...
















「……………」


「無理もない。八塩折のために大量の精を抽出したのだ」






大蛇、そして遠呂智を倒すべく作られた兵器、八塩折には酒呑童子の精が用いられている。
精気、精力などを膨大に費やす酒呑童子の体は、弱っていた。














「………案じているのか?遠呂智の化身である、私を……」


「…………気付いていたのか」





八塩折の開発、そして対遠呂智の戦いに深く関わるようになると、酒呑童子の中に失っていた記憶が戻り始めていた。







「…記憶が戻りつつある…………。だが、受けた恩は必ず返そう」







そう言って酒呑童子は、弱った体を引きずるように歩きながら、太公望の元を離れた。

























一晩寝ても、まだ体の怠さや疲れは取れない。

そして、身体への負担と共に、精神への負担も大きいのだった。














遠呂智の化身───────









だだでさえ自分は、人ではない。



その上、人がこれほどまでに団結し、倒そうとしている遠呂智という存在の化身なのだ。



知らず知らず酒呑童子は、人から距離を置くようになった。
体を気遣ってくれる者にも、遠呂智の化身であるとは告げずにいた。


『人』に対してそれを口にするのが、恐ろしい気がして───────。

















それからも、八塩折の開発は進む。



すっかり日が暮れ、暗く静かになった城の廊下、ぼんやりと庭を見ながら酒呑童子は疲れた体で寝床へ向かっていた。














「────────酒呑様!」





のそりのそりと歩いている前方から、聞きなれた声が響いた。


声は聞きなれているが、ここ数日は距離を置いていた存在。
気付かないうちに一番、距離を置いていた存在。











「……………………葵」









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