OROCHI2夢

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「──────葵は、嫉妬しないのか…?」

















「へ?」



月を眺めながら晩酌をしている時。
いきなり妙な事を言われ、葵は気の抜けた声を上げた。




「私は、葵が知らぬ男と話しているのを見るだけで嫉妬するというのに…」




しゅん、とした様子の酒呑童子を見て、葵は少し思考を働かせた。


そういえば今日、鍛練場で酒呑童子はなぜか女性陣に囲まれていて、それを見た葵はこちらに気付いた酒呑童子に笑顔で手を振った。


その後も何も変わりない葵の様子に、酒呑童子はふと少しの寂しさを覚えたのだ。






もし葵が男に囲まれていたら、自分なら嫉妬や独占欲を抱くのに、葵は何も思わないのか─────と。







「嫉妬……………は、しませんね」



しばらく考えた後、葵は苦笑まじりにそう答えた。


あの時の状況と心境を思い出して辿ってみたが、どうにも葵の中に嫉妬や独占欲は無かった。


というのも、葵にとって酒呑童子の周りに人が集まるのは嬉しく、微笑ましい事。

討伐軍に加わった当初は恐れられていた酒呑童子が、人と自然に触れあい、人からも受け入れられている事が自分の事のように嬉しい。







そう考えると親みたいな感情だなぁ………と、葵はまた少し笑いながら心の中で呟いた。







「…………私だけが、あんな思いをしているのか……」




切なげな声が聞こえ、葵はふと視線を酒呑童子に向けた。

盃に注がれた酒をぼんやりと見つめながら、酒呑童子は自嘲気味の笑みを見せる。




「そ、そんな顔しないでください!私は………酒呑様がたくさんの方と自然に触れあってらっしゃるのが嬉しくて……酒呑様が素敵な方だって、分かっていただけるのが嬉しいんです」




酒呑童子の手に触れながら、葵はふわりと笑ってみせた。
しかし、酒呑童子の表情はあまり変わらない。




「でも………その、他の方と抱き合ったり、とか……そういうのは嫌ですよ?嫉妬しちゃいます」


「……そうか…………だが」




今度は少し小さくなった声で苦笑いまじりに言う葵に対して、酒呑童子は微笑んだ。







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