OROCHI2夢

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「酒呑様、いつも冷や酒を呑んでらっしゃるから、お口に合うか少し心配だったんです」


そう言いながら、また盃に酒を注ぐ。





「葵が酌をしてくれるから、余計にだろうな」


「なっ」



不意に降ってきたその言葉に、葵は軽く目を見開いた。




「…そんな冗談、どこで教わったんですか」



酒呑童子には視線を合わせず、葵はボソリと呟いた。



「冗談?冗談ではないのだが…」


「っ、わ、わかりましたからっ」


真面目な声でそう言われ、葵はかすかに頬が赤くなるのが自分でも分かった。




「うまい」



赤くなった顔を見られないようにとうつむいてしまった葵をよそに、もう一口飲むと酒呑童子はまたそう囁いた。



「……酒呑様は、お酒なら何でもお好きって事ですね」




ことり、と小さな音をたてて盆に徳利を置き、葵はそっと酒呑童子を見上げる。




「私もお酒に強ければもっとお相手できるのに…」



少し口をとがらせ、髪を耳にかけながら葵はまた視線を反らす。




「葵は酒に弱くて構わん。私が酔いつぶれた時、葵に介抱してもらいたいからな」


「…っ!もうっ、酔いつぶれるのが前提みたいな言い方して……っ」



ばっ、と酒呑童子のほうを向いて葵は不満げな視線を向けたが、またすぐにそっぽを向いた。
先ほどの酒呑童子の言葉が多少なりとも嬉しくてまた頬が赤くなる。



葵が動くたびにさらさらと揺れる髪が香り、酒呑童子はふと目を細めた。




「では、酔いつぶれなくとも、こうして側にいてくれるか?」


「なっ……!ちょ、酒呑、様!?」



酒呑童子の声が急に近付いたと思うと、それもそのはず、酒呑童子は持っていた盃を置くと体を寄せて葵の耳に唇が触れるか触れないかの距離で囁いた。




「やっ………!酒呑さま…ッ何、し………てっ!」


「いや、葵の髪は良い香りがするな、と」



おもむろにすりすりと鼻先を葵の柔い髪にあてて酒呑童子は心地好さそうに香り吸い込む。



「や…やだっ……!酒呑さまっは、はなしてくださ……ッ」


「ん…嫌か?」



いつの間にか腰に腕が回され、自由に動けない状態となってしまって、葵は全身の熱が一気に上がるのを感じた。



「酔って……らっしゃるんですか……っ!や…ん……!〜〜〜〜〜ッ!」


「酔っているわけではないが……こうしていると、心地好い」


「んぅ………ッや…はな、し……て……ぇ………ッ」



酒呑童子の熱い吐息が肌にかかり、葵の体は自然にぞくぞくと震えてしまう。
吐息から漏れる酒の香りも相まって、葵も酔ってしまいそうな感覚になった。
顔は火が出そうなほど熱い。









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