OROCHI2夢
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もちろん分かっている。兵器の重要さも、そしてその威力も。
考えてみれば、人を殺める物を作るのが嫌だという感情は、この世界では、捨てなければならない。
名だたる武力達は皆、自分の世界や場所を取り戻すために戦っている。数多くの妖魔を倒し、前へ進んでいくのだ。
自分だって元の世界に戻りたい、だが自分の手を汚したくはない、そんな感情は、命を危険に晒して戦う人たちにあまりに失礼で、疎まれるべきもの。
私は、私に出来る事を、精一杯やらなければならない。
少しでも、役に立てるのなら。この乱れた世界を、元に戻す手伝いを。
「そもそも相手は妖魔なのだ。それほど罪悪感を感じるものでもないだろう」
全て元凶は奴等なのだからな、と付け加えて太公望様は言った。
確かにその通りではあるが、兵器、しかも大型の物ともなれば誰が巻き込まれてしまうかもが分からない。
それでも、向き合わなければならない時も来る。逃げてはいけない。それは、自分のため、皆のため、そしてこの世界のためだ。
「…そう気を張るな。貴公の思いとて何一つ間違いではないのだからな。ただ、この世界の状況に打ち勝つには、多少の厳しさが必要だという事だ」
いつもより少し優しい口調で、太公望様はそう言ってくれた。
「……甘えていられないのはよく分かっています。だから私は、私にできる事を精一杯…それだけです」
「良い心掛けだ」
太公望様は、少し微笑んでいた。
それは私を認めてくれたように思えて、私も同じように微笑む。
「それに最近耳にした噂によると、妖魔軍の中に今まで対峙してきた妖魔とは違う者がいるらしい」
太公望様はどこか遠くを見るような目線で、そう言った。
「その者が対遠呂智の鍵を握っている可能性が高い。近々捕らえる事になるだろうか。そうなれば、大規模な殺傷を起こす兵器も、必要なくなるかもしれんな」
太公望様のこの言葉を、その時はただそうですかと聞いているだけだった。
私にとって、この想いを大きく焦がす大切な出会いになるとは気付きもせずに────────。
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