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□結論、溺愛
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今日は元親様に少しだけ暇を貰い、城下に足を運んでいた。

元親様はお忙しいから一緒に行く事はできなかったけれど。





久々の城下にはしゃぎ疲れて、私は城に戻った。帰ってきたと伝えに、元親様のもとへ向かう。












パタパタと小さな足音を立てて、元親様がいつも書簡や布陣図と向き合っている部屋の前に到着した。






「――――――元親様、失礼します」






短くそう告げて、言い終わらないうちに襖を開けた。











そして、私の目に映った光景は―――――――………

















「――――――………ッ、」






部屋の中にいたのは元親様、そして―――――見知らぬ女の人。




一瞬、呼吸器が痙攣を起こしたかのような感覚に陥り、息が詰まる。

言葉は何も出てこなくて、変わりに心臓が痛いくらいに跳ね上がった。




言い終わらないうちに襖を開けたせいで、元親様と女の人が微笑みを浮かべながら会話していたのも見てしまった。




何も出来ずに、立ち尽くす事しか出来ない。

お楽しみの所をお邪魔しました、なんて嫌味の一つでも言えたらいいのに、私はまだそこまで大人じゃなかったようだ。


言葉はおろか声でさえ、一向に出てきてくれる気配がない。








「――――――――……」





元親様が、何か言っている。けれど何と言っているのか、私の脳には入ってこない。

名前を呼ばれた気もするが、どこか遠い所にいるような感覚に陥る。













(―――――――逃げ、たい)






この場所が

この雰囲気が

この―――――――現実が、







嫌で仕方なくて、早く立ち去ろうと思った。







一歩引き下がると、元親様が私を引き止めようと近寄ってくる。


今は何故か、それさえも怖くて、元親様に触れられたら――――壊れてしまいそうな気がして。

















「…………………ごめん、なさい…………ッ」





やっと出てきたのは謝罪の言葉。ぽつりと言い残して、元親様の手から逃げた。











「―――――――…待て――ッ……!」




後ろから元親様の声が聞こえたが、それが余計に、逃げたいという感情を強くさせた。





この場から離れたい一心で駆け出した足取りは予想外に速く、特にどこかを目指すわけでもないまま、私はしばらく彷徨った。











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