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□結論、溺愛
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「――――――ッ」
しばらく城内を逃げ回った後、小さな中庭にある木の根元に、崩れ込むようにして座った。
雑草に覆われた一帯は人気も少なく、私の姿を隠してくれる絶好の場所。
空を赤く染める夕焼けは怖くなるほど綺麗で、それが何故か胸に突き刺さった。
――――――私がいない間に、あの人と何を話したのだろう。
一つの部屋の中で、何を―――。
襖を開けた時、女の人だけでなく、元親様も微笑んでいた。
忙しいと言っていた。だから一緒に城下に行けないのだと。
でも、元親様のそばにあった机には書簡などは一切無かった気がする。
――――――――――怖い
信じている。
知り合いなのかもしれない。同じ部屋にいたのはたまたまで、私が運悪く一番厄介な場面を見てしまっただけなのかもしれない。
信じていたい。
なのに―――――怖い。
知り合いなら、どういう関係なんだろう。
そんな疑問が頭から離れない。
私の知らない、綺麗な人。
私なんかより、綺麗な人。
――――――私には、そう映った。
飽きられるのが怖くて
捨てられるのが怖くて
一夫多妻の世界。
正室・側室なんていう制度が当たり前の世界で、こんな感情を抱くほうがおかしいのかもしれないけど。
ただ、苦しくて、怖くて、消えてしまいたくて、自分の存在を―――消したくて。
あの人とは何も無いんだと信じたいのに、二人で話をしていたあの場面が邪魔をする。
「――…………ッ、う……ぁ……」
身体を小さく丸めて、髪を掻き毟りながら声を押し殺して泣いた。
「……ひッ………うぅ……」
「―――――ッ、……こんな所にいたのか」
「……………!」
涙を拭う力さえ出てこなくて、ただ泣いていると背後から聞き慣れた声がした。
「…………探したぞ」
少し、息が荒い。
私を探し回っていたのだろうけど、今は一人でいたいと思ってしまう。
「……………風邪を引く。中に――――――」
辺りはいつの間にか薄暗くなっていて、中に入ろうと元親様が私の身体に手を伸ばした。
「―――――――ッ、」
私に向かって伸ばされた手から逃げるため、私は咄嗟に身体を起こして元親様から離れようとした。
今は、その優しさが、温もりが、辛い――――――
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