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□Beginning.
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戦で村は壊滅状態、生き残ったはいいが行く宛が無くなった私や村人を、豊臣方は迎え入れてくれた。
新たな土地を与えられて開墾する人もいれば、女性は下女として城で水回りの仕事や掃除などの雑用を与えられた。
雑用といえど、城での生活は新鮮で、周りの人との関係も良好。
天下も安定してきている中、私はいつもと変わらない毎日を送っていた。
―――――――
「ねぇ、あの方って素敵よね〜!」
「そうそう、若くして家督を継いだけど、実力があって〜」
「お近付きになりたいー!」
同い年くらいの他の下女や女中はこの手の話が好きらしく、男の人の話で盛り上がっているのをよく見かける。
しかし私はそういった話題にはあまり参加しない。
見た目も普通で、特に教養があるわけでも無い私は、誰かを好きになってもその思いは叶わないだろうと思い、恋には消極的だ。自虐ではなく、あくまで客観的事実として理解した上で、恋を諦めていた。
そんな日々の中で私の前に現れたのは、素っ気なくて不器用で―――――素敵な人でした。
「うぉぉい清正ー!!なんで俺を置いて頭デッカチなんかと出陣したんだよー!?」
「うるさい馬鹿。あの軍の総大将はお前と違って頭が良くて用兵も上手い。今回は三成の策が必要だったんだ」
「ふん、突撃しか出来んような猪武者では、相手の罠にはまり今頃は猪鍋にでもされて食われていただろうな」
「んだとぉぉぉぉ!?この陰険頭デッカチがぁぁぁぁぁ!!」
「やめとけ正則。…………三成の言ってる事も一理あるし…な…………」
「え゙ぇぇぇぇぇ!?清正までひでぇよぉぉぉー!!」
「ふん」
「わ、笑ってんじゃねーよ頭デッカチがぁぁぁぁ!」
鍛練場で言い争っている三人は、秀吉様の子飼の将だと聞いた。
私のような下の者とは関わりの無い方たちだが、その武勇や知勇は、誰もが認めるものだ。
………まぁ、石田三成様は目上の人に対しても物事をズバズバと言うから不遜だと思われてるみたいだし、加藤清正様は感情をあまり表に出さないから冷たいと思われがちだし、福島正則様は何事も力で片付けようとする面があるから乱暴だと恐れられてるし……………三人の事をあまり良く思ってない人も中にはいるようだけど。
こうして遠目から三人を眺めていると、ケンカするほど仲の良い、そんな兄弟、もしくは友人のようにしか見えない。
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