拍手文
□Azalea
1ページ/7ページ
『Azalea』
高貴な家の出身じゃない、それどころか武家の人間でもない、ただの一般庶民の私が元親様のような一国の長である方のそばにいていいのかと、毎日考えるようになっていた。
親さえいない私をいきなり恋人として城に迎えるのは周りがあまり良い反応を示さないだろうから、と、元親様はまず私を元親様専属の下女としてそばに置いた。
今考えれば、私のような者がいくら下女であろうと元親様専属になれるなど、さぞかし上手く話をもっていったんだろうな、と思う。
「お仕事ばかり、大変ですね」
とはいえ、元親様専属とあって一緒にいれる時間は多く、私達の仲はまだ周りに知られていないが私は今の状態でも満足である。
「最近は領内での小競り合いが多い。処理しなければならない問題が増える一方で迷惑極まりないな」
内紛を収めるための案を練りながらめんどくさそうに頬杖をつく元親様の机にお茶を置き、私はその横顔を眺めた。幸せだなぁ、などと呑気に考えつつ。
そんな中、ちょっとした事件が起きたのは数日後の事だった。
「貴女を、お慕いしているのです」
それはいきなりの告白だった。
「………………………へ?」
思わず口からこぼれたのは素っ頓狂な声。
告白してきたのは、何度か顔を見たことのある、元親様の部下の一人。
正直、名前すらうろ覚えのその若武者は私をじっと見つめている。
.