拍手文

□“裏腹”
1ページ/8ページ







『裏腹』


















―――私だけが不幸になるなら、どんな言葉でも受け入れる






でも、愛しい人まで不幸にしてしまったら―――――……?














「元親様、お食事の支度ができました。」



庭を望む廊下で、家臣の方と話をしている元親様に、そう告げる。





「分かった。すぐに行く。」





いつもと同じ様子で応える元親様の横で、家臣の方は険しい表情を浮かべた。
そんなことは日常茶飯事となっている。
















“政略結婚”――――




私と元親様は、政略結婚だった。

5年前に両親を亡くした私は、叔父に引き取られて暮らしたが、父がいなくなったことで悪人と化した叔父が私と元親様の縁談を強引に持ちかけ、私達は結婚した。

叔父の本当の狙いは地位でも領土でもなく、元親様の持つ財産。

この事実は元親様の腹臣だけならず、城内の全ての人、領土内の人々、そしてもちろん元親様にも、知れ渡っている。

最近では、私は元親様を殺し、財産を奪うために差し向けられた叔父の手先ではないかという声さえ聞かれるようになった。


そんな風に言われても仕方ないと、自分でも納得してしまう。












「どうした?気分でも悪いのか?」



ふと、元親様の声が聞こえた。




「あ、いえ………少し、考え事を…………」




知らぬ間に深刻な表情になっていたようで、すぐに私はいつもの表情を作った。












.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ