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□芝桜の心
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『――――私、大きくなったら幸村様のお嫁さんになります!』
子供の頃は何も考えず約束をするものだ。例えば婚約という重要なことでさえも。
その約束は成長すると同時に薄れ、忘れられる運命だと、知らない子供だからこそ―――――。
『芝桜の心』
「私のお嫁さんに?」
「はい!もう決めたのです!幸村様のお嫁さんになるのが私の夢です!」
そんな事を言ったのは何歳の頃だっただろうか。
庭で遊ぶたびにケガをする私を心配し、いつも優しくしてくれるお兄さんに私は大胆にも嫁入り宣言をしたのだ。
親同士に親交があったため、よく出会っては何かと世話になっていた幸村様はお兄さんのような存在だった。
しかし、私が嫁入り宣言をした後に幸村様はその武勇・知謀の片鱗を見せ始め、真田家の嫡男として将来有望であるとされ、会う機会は極端に減った。
「幸村様に会いたい!幸村様に会いたい!!」
そう駄々をこねては親を困らせていたような記憶もある。
だが不思議と会えない日々が続くと子供ながらに状況を理解するもので、いつの間にか『幸村様は偉い武将さんになるために頑張っているんだ』と納得していた。
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