Dream!
□眠りの傍人
1ページ/2ページ
まだ少し肌寒い、春先の日の夜の事。
なぜかなかなか眠りに就けず、私はもどかしい時間を過ごしていた。
すごく目が冴えている、というわけでもなく、浅い眠りに就いてまたすぐに目が覚める、というのを繰り返している。一番疲れが取れない状態だ。
(少し、寒い……)
肌寒さと共に、人肌恋しさが募る。
ここ最近、文鴦様は遅くまで鍛練に励んだり軍議に参加したりと、慌ただしくしている。
軍にも慣れて生き生きしてらっしゃるからそれは良い事なのだが、共に夜を過ごす事は少なくなった。
そんな風に文鴦様の事を考え、姿を脳に浮かべていると、会いたくなってしまうのは仕方のない事だと思う。
私はそっと部屋を抜け出して、文鴦様の元へと向かった。
─────────
「………文鴦、様…?」
そっと部屋の扉を開けて中を覗くが、小窓から月明かりが射し込んでいるだけで灯りはなく、物音もしない。
寝台のほうに目を向けても、文鴦様は起きている様子はなくて。
こんな時間にわざわざ起こすのは迷惑だと、眠ってらっしゃるなら仕方ないと諦めて踵を返した時。ごそりと、布の擦れる音がした。
「………葵、か…?どうした?」
少し眠そうな声が聞こえて、振り向いた先には上体を起こし無造作に頭を掻く文鴦様の姿があった。
「文鴦様……っごめんなさい、起こしてしまって……」
「構わない。どのみち今日はあまり熟睡できそうになかったんだ」
その言葉で、文鴦様も私と同じ状況だったという事に驚いたが、何故か少し嬉しくもある。
「文鴦様、私も…」
扉を閉め、そっと文鴦様に近付く。
夜目がきいてきたのか、小窓から射す月明かりだけでも文鴦様がはっきりと見える。
「眠れなかったのか?」
「はい……」
「とはいえ、こんな時間に寝間着一枚で男の部屋に来るなど…無防備だな」
「!だって…!」
からかうように笑いながらそう言われ、一気に顔の熱が上がる。
「冗談…ではないが、私以外の男にされては困るな」
「しませんよ…そんな…」
むぅ、と少し口を尖らせてつぶやくと、文鴦様はふっ、と小さく笑った。
.