Dream!

□小さな戯れから
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陽は傾き、橙色の光が差す時間帯。光があたる場所は少し温かいが、まだまだ肌寒い季節の真っ只中だ。

そんな夕暮れ時ののんびりした空気を目一杯吸い込んで、私は賈充様が籠っている執務室へと向かった。






手には司馬昭様から賈充さまに渡してくれと頼まれた書簡を持って。

庭が見える廊下を進み、突き当たりを曲がった奥の部屋に賈充様の執務室がある。
光があまり入ってこない部屋で過ごしているというのが妙に賈充様に似合っていて、この部屋に来るたび少し笑ってしまう。
本人に言ったら嫌な顔をされそうなので言わないが。







「賈充様ー」



すぅ、と小さく息を吸ってから、扉の前で名を呼ぶ。

が、返事はかえってこない。






「…?賈充様ー?」


朝からこの部屋にいる時はたいてい夜まで籠りっきりなのに、やはり返事がない。





「失礼しま、す……」


おかしいな、と思いながらそっと扉を開けると、そこに賈充様は、いた。

だが、私にとってはあまり見慣れない光景。




「寝てる………」



賈充様は愛用の座卓に向き合い、頬杖をついて微かな寝息を立てている。

書簡を開いたままであるところから推測するに、考え事でもしている途中で眠ってしまったのだろう。




「寝顔…」



持ってきていた書簡を座卓の側にそっと置き、眠っている横顔を見るとその整った顔立ちに多少の妬みすら覚えてしまう。

人の心を読んでしまいそうな鋭い目がまだ少し苦手な私にとっては、寝顔は見つめやすい。



が、見つめている場合ではない。
はっとして、私は賈充様から視線を外した。
まだ肌寒い時期。ただでさえこの部屋は小窓から光がもれている程度で、陽による暖かさがあまりないので身体が冷えやすい。
だがこのまま起こすと機嫌が悪くなってしまうかもしれないので、私は何か布でもかけておこうと室内を見渡した。


賈充様はまれにこの部屋で夜を過ごす事もあるため、確か毛布があったはず、と思い出してその毛布を見つけると、私はそっと賈充様の背にそれをかけた。




確かにかけた、のだが。





毛布をかけた手を引こうとした瞬間、目の前が揺れた。








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