拍手文2
□全てを包み込む
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いつもより口数が少なかったり。
どこか辛そうな表情だったり。
もともと弱音を吐くような人じゃない。
だからこそ、いつもと違って何も言わずに私を抱きしめて唇を寄せたのが、私にだけ弱さを見せているような気がして。
愛しくて
切なくて
「元親様。皆、元親様に従います。元親様に、ついていきます。………………なんて言えば、余計重圧がかかりますね」
元親様を見つめて、悪戯っぽく笑って、私はさらに言葉を続けた。
「どんな結果であろうと、元親様を恨み、憎むような事はありません。少なくとも、今元親様の目の前にいる、私は」
共に歩むのだから、と付け加える。
「きっと、兵士や家臣の方々、城下の皆さんも同じ思いです。元親様はこの国を、人々を、大切にしてくださってますから」
元親様は表情を変えず、ただ私を見つめている。
「けれど、それは元親様がいてこその事です。どうか、まずご自分を大切に想ってください。そうじゃないと、恨むどころか悲しむだけになってしまいますから」
「…………………あぁ、」
ふわりと笑って言う私に、元親様もやっと微笑みを浮かべた。
「―――――敵わぬな」
「え?」
元親様は星空を見上げると、そのまま呟いた。
「お前には、到底」
「…………?」
「言葉や笑顔、それだけで俺を満たす。その力には敵わぬという事だ」
「……………ぅ……わざわざ言わないでください…恥ずかしいです………」
元親様の直球な言葉のせいで、一気に顔の熱が上がった。
赤くなった顔を見られないようにうつむいている私の頬に触れながら、元親様はまた言葉を紡ぐ。
「お前にはいつも、助けられているな」
「そんな事………ッ!」
いつもより儚げな声だったので、私は思わず顔を上げた。
と同時に、唇が触れ合う。
「…ふ………ッん……」
私は小さな椅子に腰掛けたままの状態で、元親様は腰を屈めて真上からの口付け。
唾液を絡ませ合った後は、頬や目尻に軽い口付けがたくさん降ってきた。
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