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□僕の心は熱を持つ
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今月は司馬師夢です。
後半に裏要素がありますので、苦手な方はご注意ください。
かすかに風の音が聞こえる夜、一人きりで小窓から月を見上げるのも慣れてしまった。
司馬師様はこの所軍議や政務ばかりで忙しい。
お父様である司馬懿様から権力を譲られてからというもの、国内情勢の安定化や、各地での内乱の鎮静化…………とにかく、司馬師様がやらなければいけない事が一気に増えたのだ。
それと同時に、私は司馬師様の側にいる時間が一気に減った。
仕方ない事だとは分かっている。それだけ司馬師様は期待され、実際に能力もある方なのだから。
そして今夜も、司馬師様は家臣の方達と軍議を開いている。
もうすっかり夜も更け、ずいぶん寒くなった。
まだ軍議は続いているのかと、そっと部屋を出て様子を見に行く途中、まだ遠くではあるが司馬師様が軍議を行っていた部屋から出てくる姿がちらりと見えた。
もう終わったのですかと話をしに行こうと、小走りで駆け出そうと思った時、視線の先で司馬師様が笑った。
司馬師様の視線は、私には向けられていない。
お茶か何かを持ってきたのであろう女官に、微笑んでいる。
――――――久々に見た笑顔は、私には、向けられていない―――――――。
胸が、締め付けられる感覚。
司馬師様に笑顔を向けられた女官は、照れているのか、顔を隠すような仕草をしている。
仕方ない事だ、司馬師様は以前からずっと、女性からの人気が高いのだから。
分かってはいても、そんな姿を見ているのが嫌で、苦しくて、今司馬師様の側にいる事が羨ましくて、嫉妬に似た黒くモヤモヤした感情が込み上げてきた。
「………………ッ!」
私は急いで、部屋に戻った。
「ぅ…………あ…ッ」
部屋に入るなり、つらさと寂しさと悲しみが同時に込み上げてきた。
我慢できずに崩れ落ちると、一気に涙がこぼれ落ちた。
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