拍手文2
□お互いさま
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またしても酒呑夢です。
自己満足すぎて申し訳ありません…!
今回も短いお話ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
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今回の戦は、今まで以上に大軍で攻めてきた妖魔が相手。
私達討伐軍も精鋭を集め、万全の態勢で挑む。
そんな中、私は本陣で負傷した兵や武将の手当てをしていた。
「初めはどうなるかと思ったが、我らの勝ちとなりそうだな」
「あぁ、人間の力を思い知らせてやったぞ」
周りからは、そんな会話が飛び交っていた。
実際、敵の妖魔軍の数は少なくなっている。
そして私達討伐軍は多くの主将が残り、それぞれ砦の守備や、敵本陣で戦っている人もいる。
しかし、勝利を確信して油断していた私達の元に、急報が告げられた。
敵は奇襲部隊を忍ばせていたらしい。その部隊は敵本陣を攻める討伐軍の背後を狙った。
それを聞き、私達はざわめいた。手当てを受けたばかりの兵や武将たちが慌ただしく本陣を後にし、救援に向かうのを、私は不安に思いながらも見送る事しかできなかった。
だが、また新たに報がもたらされた。
奇襲部隊が出た近くの砦にいた酒呑様が迎撃態勢を取り、狙われていた味方部隊に影響はない、と。
それを聞いて味方本陣にいた人達は胸を撫で下ろした。
酒呑童子なら大丈夫だ、とあちこちで声がする。
確かに酒呑様は人並み外れた(というよりも人ではないが)力を持っていて、たとえ一人でも数人を相手にできるだろう。
しかし私は、簡単に安心できるはずもない。
今まで潜んでいた奇襲部隊は傷もなく万全な状態だろう。それに比べ、酒呑様はすでにあちこちで敵と戦っていた。
それに酒呑様は、傷を負ってもあまり気にしない節がある。
気付かぬうちに無理をされては、いつ倒れるかわからない。
そんな酒呑様を知っている私としては、安心感などここには無い。
(酒呑様…………)
今すぐに酒呑様のもとへ向かいたい。が、混戦中に私が行っても足手まといになるだけなのは分かっている。
それでもただ待つだけなどできなかった私は、本陣を飛び出した。
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