無双過去夢
□君がいる、だから僕がいる
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使用人とは、身の回りの世話をする者。いなかったらいなかったで何かと不便なのだ。
「葵と言ったな。今日からしっかり働いてもらうぞ」
「は、はい!!」
葵は歩き出した俺の後を急いで付いてくる。
そうして、俺達の生活が始まった。
「お前はこの部屋を使え」
「はい、ありがとうございます!」
俺が空き部屋を使えと言うと、葵は嬉しそうに笑った。
その笑顔は明るく、よく笑う女だと思った。
――――この時から、俺はこいつに惹かれていたのかもしれない。
他人に興味を持たない俺が、一人の女に惹かれていった。
こんな俺の元で働き、こんな俺に無邪気な笑顔を向けてくれることが嬉しかった。
今までの使用人の女とは何かが違うと、はっきりと分かった。
俺を呼ぶ声も、その笑顔も、全てを独り占めしたいとすら思うようになっていた。
だが、俺はその気持ちを素直に口に出来るほどの人間ではない。他の者と親しげに話している葵を見ると、葵の意思など関係なく、奪ってしまいたいとすら思い始めた。
そんな、ある日。
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