無双過去夢
□必要なんだ。
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物音を立てるくらいなら、敵の隠密などではないだろう。
そう考えながら元親は確実に音がした草むらに近づいていく。
―――カサッ……
「そこか!?」
元親は音がした草むらの中にいる人間の腕を掴み、引っ張った。
「…………ゃ…!」
その瞬間、か細い声が耳に届いた。
「……!?」
掴んだ腕も細く白く、まさに若い女の腕。
元親は予想もしないことに驚きながらも、草むらから女を出した。
「…こんな所で何をしている?」
「……………」
その女はまだ歳の若い、町娘だった。
月光に照らされた肌は白く、黒髪によく映えている。
ここにくるまでに汚したのであろう、着物は所々が土で汚れていた。
「………三味線の音色が綺麗で………つい…」
女はうつむいたまま、小さくそう言った。
「聞いていたのか……」
「はい………」
「だが、若い女が一人でこんな場所にくるべきではないぞ」
「はい………」
元親の言葉に、女はただ申し訳なさそうに答える。
「見つかれば親も心配する」
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