Undaily!

□第1話
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―――――ガチャリ、






玄関扉の鍵を開ける、小気味良い聞き慣れた音が響いた。







「ふぅ」



玄関に入って、ドアを閉めて、靴を脱ぎながら一息。


やっと一週間が終わった。今日は金曜。明日はいつも通り休日だと思うと不思議と気が緩む。しかしある意味いつもと違うのは、本来休日出勤である明日だが、有給休暇を取ったという事くらい。休日出勤は大嫌いなのである。






今日はどれだけ夜更かししても、ものすごく早く寝てしまってもいいんだと思いながら、鼻歌まじりで部屋へ上がる。金曜の仕事終わりは、疲れているのに不思議と気分は良い。


廊下、というほどでもないくらい短いフローリングの上を歩き、壁に取り付けられたスイッチを押してリビングの明かりをつけた。

とりあえずソファーにダイブするか、と思いながら。













「―――――――………」






そして目の前の光景に、言葉を失った。
代わりに目はこれでもかというくらいに見開かれ、心臓が一気に跳ね上がった。







「……………………ん?」







案外、叫び声などはすぐに出るわけではないらしい。

状況が把握できていないからである。








パシン、と乾いた音を立てて、一旦、リビングと廊下(?)を仕切る引き戸を閉めた。普段は開け放してあるこの引き戸を閉めたのはいつぶりなんだろうか。



とりあえず冷静になれ、自分。いや、案外冷静なのだが、というかこの状況は一旦何なのか、全く脳の回転が追い付かない。


とりあえず、心臓の音はあまりにもうるさい。





深呼吸をした後、引き戸を少しだけ開けてリビングの様子を覗く。


何の変化もない。










とりあえず、見慣れたリビングには、







大人の男の人が、1、2、3………計6人、




―――――――倒れています







リビングに所狭しと。
ソファーに乗っかってる人もいる。


寝ているのか、ぴくりとも動かないその人達を、恐ろしい事に―――――私はとても良く知っている。


確かめなければいけない、と、恐る恐るその人達の元へ近寄って、一人一人の顔と格好を見る。







(ちょ、唾液の分泌量半端ないんですけど私)






自分にツッコミながら、確信した。










ゲームの世界からこんにちは、皆さん!







頬が引きつりました。






(えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??)







もはや声にもならない叫びが、私の中で響いた。
心臓が弱い人だったら確実に鼓動が止まっているだろう。




リビングに倒れていた人達は、私が良く知るゲームの中の人なのです。



こんにちは、三成さん、兼続さん、幸村さん、清正さん、元親さん、政宗………さん。


いまだ目を覚まさない皆さんの側で正座をして、心の中で挨拶をした。



ただ単にゲームの人物に似ている現代の人、という可能性もゼロではないかもしれないが、まず第一に、確実に鍵は閉めていた。玄関も、その他の窓も。
窓が破壊された形跡はないし、仮に不法侵入だとしても、リビングで倒れている理由が分からない。






(これが俗に言う『逆トリップ』略して『逆トリ』ですか!)



一番、納得のいく答えなのだが。


何故私の家なのか、それ以前にこれは夢なのだろう!?
だとしたら今日1日の出来事も全て夢なのだろう!?

と思いながら、さっきからずっと頬や手の甲を半端ない強さでつねっているのだが、痛い。めちゃくちゃ痛い。


手の甲なんて強くつねりすぎて内出血でもしそうな勢いだ。





夢にしては鮮明すぎるよね、と思いながらつねるのをやめ、そっと、目の前に倒れているもふもふの人…もとい三成の肩に、触れてみた。









(あ、ダメだ、実物だコレ)






ここに、確かに存在する。
指先に触れた鎧の感触が、これは本物だと証明していた。

さらに、恐々と触れた頬が、温かい。これは―――――――夢じゃ、ない。







ここに倒れている全員、息をして、確かにここに存在している。








―――――――これはものすごい事になってしまったと、とりあえず歪んだ苦笑いをすると、目眩がした。











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