Undaily!
□第3話
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それぞれの思惑が頭の中で巡り、少しだけ沈黙が流れた後、不意に三成が口を開いた。
「……………俺は、こんな事をしている暇は無いのだよ………やらねばならぬ事が、山ほど残っているというのに………!」
ぽつり、と吐き出すように低い声で呟いた三成の表情は、私にはとても辛そうに映った。
三成は豊臣政権の中でも重役の位置にいる。それにより責任感も強いのだろう、端正な顔立ちには焦りや不安が滲み出ている。
今までは深く考えていなかったが、私と彼らでは全てが違いすぎる。立場も違えば、存在の大きさだって。
彼らは、元の世界に何もかもを置き去りにした状態でここにいる。
任された仕事は途中放棄のような状態で、会いたい人にも、会えない。
何の予告もなく、慣れ親しんだ場所から引き離された。
ふとそう考えると、私はなんだか恐怖さえ覚えた。
――――――そんな表情を、しないで。
三成の辛そうな表情を見て、胸がズキリと痛んだ。
私が彼らをここへ連れてきたわけではないのに、何故か申し訳ない気分でいっぱいになる。
「そうは言っても、どうしようも無いぞ、三成。とりあえず今は元の世界に戻る手段が分かるまでどうするか、だな」
三成にそう促す兼続も、最初の頃より少しだけ気力が無いように見えて、私は余計に胸が痛む。
「こんな世界でどうやって生きていくつもりだ。俺には見当もつかん」
「それはだな…………」
「とりあえずは住む場所を探さないとな。言葉は通じるんだ。何とかなるだろ」
三成、兼続、清正の順に話をしている。
そこに幸村達も加わり、これからどうするかの話し合いが始まった。
(―――――――あ、れ?)
私が胸を痛めてちょっと落ち込んでいる間に、6人でガヤガヤとこれからの事を話しているのは良いが、何故か私は完全に蚊帳の外、という状態になっている。
今この世界で彼らの状況をお互いに一番理解しているのは私なのに、なぜ除け者にされているのだろうか。
「あのー……」
6人に向かって、おそるおそる声をかけると、全員が私を見た。
「住む場所なら、ここに住んでもらえば良いですから」
私は何気なく、当たり前、というふうにそう言った。
が、視線の先にいる6人は一瞬、動きが止まった。
「皆さんはこの世界の事を何一つ知らないし、皆さんの状況を理解、納得しているのはこの世界で私一人ですから。せめてこの世界の事をきっちり理解するまではここにいて下さい。じゃないと皆さん、確実にすぐ死にますよ」
というか、何で私を差し置いて住む場所を決めるとか言ってるんだ、この人達は。
外の景色を見た段階で自分達だけでは生きていけないと悟っただろうに。
この場合は『ここに住む』以外の選択肢は存在しないと思う。
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