Undaily!
□第10話
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「体用洗剤と石鹸、どっちがいい?」
「…………………体用洗剤」
あ、多分気になるんだろうなぁ、ボディソープ。
「この布につけて、泡立ててからね。背中だけ洗ったげるよ」
さすがにこればかりは私が全身洗うわけにいかないので背中だけ流しておいてあげる。
「はい、じゃあ後はお願いね。体を洗い流して、髪もまだ髪用洗剤その2がついたままだから流して、それが終わったらゆっくりお湯に浸かってね、逆上せない程度に」
シャンプー、コンディショナーという名前を早く覚えてもらおう、なんて思いながら、説明が終わったので、じゃあ、と言って浴室から出ようとした時。
「―――――――葵」
不意に、三成に名前を呼ばれた。
「へ?」
あれ?三成に名前呼ばれるのも初めて……だよね。
振り向くと、三成は椅子から立って真剣な表情を浮かべている。
「………すまなかった…………お前を、疑った事」
何を言いだすのかと思えば、初めて会った、数時間前の出来事についてだった。
「あぁ……仕方ないよ、私だってほんとに信じられない出来事だったんだし。最初は誰でもそうなるって」
少なからず、三成以外のメンバーも疑ってたわけだし。
「私は気にしてないよ。だから三成も、気にしないで」
本当に、あれからバタバタしすぎて三成に鉄扇を向けられた事さえ忘れかけてたんだから。
「…………………」
「……み、つなり?」
三成は何を思ったのか、無言で私に近づいてきた。
そして、戸惑う私の顎を持ち上げて、喉元を覗き込む。
…………近い、近いよ三成!!
私のほうが盛大に照れてしまうじゃないか!
「………やはり、赤くなっていたか」
「…あれ?すでにバレちゃってました?」
そう、実は喉元に鉄扇を突き立てられていた時、扇の先がチクチク当たっていたのだ。
尖っていた所が断続的に当たったため、まだ少し赤みが残っている。
私が気付いたのは買い物に行く前、準備をしてる時だったかな。その時よりも薄くはなっているが。
「……………すまない」
「もう!気にしてないって!そんな顔、三成らしくないよ」
三成は冷たいようでいて、案外ちゃんと周りを見て、不器用ながらに気遣ってくれるのだ。
それだけで充分なのに、そんな辛そうな顔で謝られてはこっちまで辛くなる。
「でも、ありがとう。ちゃんと見ててくれて」
本当に嬉しくて、自分なりに満面の笑顔でそう言うと、また「ふん」と言って思いっきり視線を反らされた。なんか悔しいぞ。
「あ、そうだ三成、何か嫌な事とか不満とかあったら何でも言ってよ。この世界に来て少ししか経ってないからまだよく分からないかもしれないけど……嫌なまま我慢されちゃうのは私も辛いし、妙に気を遣われるのも好きじゃないし」
浴室を出る寸前の所で、未だ視線を反らしたままの三成にそう声をかけると、ゆっくりとこっちを見てくれた。
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