Undaily!
□第15話
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「ただの馬鹿だとしても、よほどのお人好しだとしても、どちらにせよ俺達は葵を支えなければならない。あいつ一人に荷を背負わせるわけにはいかないからな」
「葵は三成や幸村に、我慢しないでほしいと言ったが、それは葵にも当てはまる事だ。一番大変なのは葵なのだから、少しでも無理をさせないようにしなければな」
元親が告げた結論に、兼続がさらに付け加え、全員の思いが一致した。
出会ってまだ数時間だというのに、葵と6人の距離はまた一つ、縮まった。
葵の、明るく、嘘の無い笑顔や言葉には、彼らの心を揺らす力があった。
「なんだか不思議ですね。初めて会ったというのに、支えなければ、と真剣に思えるなんて」
「…………まぁ、状況が状況だしな」
幸村が穏やかな口調で呟いた後、清正は清正らしく、現実的な事を言った。
どことなく葵と距離を取っているように見える清正のそんな発言に、幸村は少しだけ苦笑いをこぼした。
――――――……
「ふぅ、さっぱりしたー」
しっかり温まった私は、髪を拭きながら脱衣所を出た。
「あれ、皆起きてたの?先に寝ていいって言ったのに」
脱衣所を出てすぐ、リビングでいまだにテレビを見ている6人の姿が目に入った。
喉を潤そうと、コップに水を入れて私もリビングへ行く。
「お前を置いて俺達だけ先に寝るわけにはいかないだろう?」
水を飲む私を見ながら、元親が優しい口調で言う。
「そんな事、気にしなくていいのに」
半分ほど水を飲み、コップを机に置いて私も元親を見た。
「これも礼儀というものだ」
今度は兼続がそう言った。
…………私は家主なんだからとか、そういう事を気にしてるんだろうか。そんな事言ってたらいろいろ不自由なのに………と思ったが、何だか今は言い出せる雰囲気じゃない………何故だ。
「………じゃあ早く髪乾かしちゃうね」
さっき思った事はまたタイミングのいい時に言うとして、とりあえず今は早く、寝られる状態にしなければいけない。
この様子じゃ私が寝ないと6人も寝ないっぽい。
まだ髪にはある程度水分が残っていて、乾かすには時間がかかる。そこそこ乾いたら寝よう、生乾きでもいいやと思いながら鏡台の前に座り、ドライヤーを手にしてスイッチをつけようとした、瞬間。
「へ?」
ひょい、と私の手からドライヤーがすり抜けていった。
「………………元親サン?」
ドライヤーの行き先を追うと、そこには微笑む元親がいて。
「乾かしてやる」
なんて言われてしまった。
「…………いやいやいや!!自分でやるから!自分でやるからー!!」
一瞬、ポカーンとしてしまった。
世界が止まってたよ。
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