短編
□白黒2+
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屋上に一人取り残された俺は、とにかくどうでもいい事を考え体を落ち着かせることにした。
昔、婆ちゃんが作ってくれた煮物のことを思い出していると自然と熱は冷めていった。
ああ、懐かしいな婆ちゃんの煮物。また食べたいなぁ。
そんな生暖かい思い出に浸りながら俺は教室へ向かった。
騒がしい声が教室から漏れ、廊下にまで響いている。
全く…休み時間と何ら変わらないんじゃないかこれは。
─ガラッ
「コラーッ!あんまり騒ぐなって言っただろうが!」
「うわっ先生!」
「お、お帰りー!」
バタバタと慌てて自分の席へと戻る生徒達に混じり俺も教壇に着く。
「おい、二礼ー」
大人数の話し声が行き交う中、その 一人の生徒がもう一人の生徒の名を呼ぶ声がやけにクリアに俺の耳に届いた。
「お前明日ちゃんと、さっき言ってた漫画持ってこいよー」
「わかった わかった」
なるべくあっちの席の方は見ないで過ごそう。そう決めていたのに反射的に俺は、その声がする方向に目を向けてしまった。
「……っ」
奴と目が合った瞬間、治まっていたはずの体が、先程まで弄くられていた胸がズクリと疼いた。
眉をひそめた俺を見て二礼は舌を出して小生意気に笑う。
煮物。
煮物煮物煮物。