短編

□一時の快楽、偽りの幸せ+
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「魚の骨ってさー、案外丈夫だよな」

「ああ…、まあそうだな」

確かに、今日焼いた鮭の骨は太くて固い。

朝ご飯には欠かせない納豆を練りながら俺は啓太が取り除こうとしているその半透明の骨を物凄く客観的に眺める。


「ほら、これなんか簡単に肉とかぶっ刺せそう」

たった今取った一本の長い骨を自慢気に掲げて啓太は薄く笑った。


そして、

「おりゃっ」

なんの前触れもなく、唐突に、おもむろに、躊躇なく、勢い良く、啓太はその骨を自らの腕にぶっ刺した。


あまりにも突然なことに思考回路が叩き切られ、ご飯に注ごうとしていた納豆をボタリとテーブルにこぼしてしまった。


「…馬、鹿っ!!」

腕に開いた穴から溢れ出てきた血液を見て俺はやっと声を出すことができた。

そして慌てて包帯やらなんやらを取りに薬箱の所へとダッシュする。
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