短編集
□微熱
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「ああもうっ! また本の場所間違ってる!」
「えー、別にどこでも同じじゃん」
「か行とな行はえらい違いよっ!」
無造作な髪を一束つまんでクルクルと指で遊びながら有川は子供っぽくムスッと膨れ、私が突き付けた本を受け取る。
「な行だからね、な行!」
「なーんでそんな神経質かなー委員長は」
「神経質って…アンタ、本が帰るべき所に帰れないでいて可哀想とか思わないの?!」
「あ、また出た。委員長の不思議ちゃん発言」
「なっ!!…不思議ちゃんって言うなっ!」
有川はケラケラと笑い、な行の本棚へ走って行く。
…アイツが来てから、私ののほほん図書委員ライフは乱されっぱなしだ。
先月の4月、私は2年間真面目に委員の仕事を全うしていたからという理由で委員長に選ばれた。
仕事の内容は特に変わらないし、本と関われる時間が増えたのでそれに関しては何の不自由はない。
…だが、問題なのは新しく入ってきた1年生…そう、この有川だ。