ビヨリ短編集
□ポピー
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最近太子の姿を全く見なくなった。
いつもいつもこっちの都合なんてお構いなしにしつこくつきまとってきていたのに、もうかれこれ1ヶ月は顔を合わせていない。
太子のことだから道端に落ちてる変な物でも食べて体を壊したんじゃないか。
…と思っていたけど、今日、朝廷内で真面目に仕事をしている太子の姿を偶然チラリと目撃した。
他国の使者に会うのか、太子は頭から足の先まできっちりと正装し、見るものを圧倒するような気品さを溢れ出していた。
一瞬誰なのかわからなかったくらいだ。
今まで見てきた太子とはまるで想像もつかないその風貌に、位の違いを改めて叩きつけられたような気がした。
僕の知っているあの情けなさ満載の太子は偽りの姿。あれが本当の太子なんだ。
今までのは息抜きだったのか気まぐれだったのか…。
わからないけど、僕なんかとおふざけするのはもう止めにして仕事に専念する事にしたんだろう。
…全く、どこまで自分勝手な人だ。
あまりにも突然で、そしてあまりにもアッサリと太子と僕の間に大きな距離が出来たとわかって、頭の中をスコンと突かれたような、よくわからない感覚に陥る。
…でもこれで僕はアホ太子に頭を悩まされる心配はなくなった。
ツッコミ人生からおさらばなんだ。