ビヨリ短編集
□ポピー
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………。
嬉しいはず。
なのに、何でこんなに胸が痛むんだろう。
今まで見てきた馬鹿丸出しの太子が脳裏に浮かんではそれを必死に掻き消す。
だけどすぐにまた太子は現れる。
記憶の中までこんなにしつこくかき乱されるなんて……
どこまで僕はアイツに振り回されなきゃならないんだよ…ちくしょう。
もうあの人には届かないのに。
今までの、暴言吐きまくりの会話を交わすことなんてできやしないのに…。
また、会いたい。
ふざけ合いたいんだ。と胸が悲鳴を上げる。
…いつから僕はこんな女々しくなったんだ…。
「はぁ…」
見上げた夕焼け空の雲のようなモヤモヤが、僕を取り巻いて暗く暗く、微熱をもった僕の心を沈めていく。