仁王ドリーム*

□まちぶせ
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「さてっ、」


私はいつものように、今お気に入りの小説を取り出し、いつもの場所へと向かう…




そこは、良い角度の日差しと心地よい風が通り抜ける、私だけの秘密の場所。




でも、今日はいつもとは違っていた。



「うそっ…」



私は思わず、足を止めてしまった。



そこには、あの有名な立海テニス部レギュラーで、私の片想い中の人でもある、仁王先輩がいたからだ。

「よぅ。 やっと来たかのぅ。」

「??」

「待っとったんよ?」

「ま、ま、待ってたって、私をですか!?」

「他に誰がおる。」

その言葉を聞いたとき、私はすごく嬉しかった。

でも、私の頭には疑問しか浮かばなかった。


なんで私を待ってんの?

まず、仁王先輩って私のコト知ってるのカナ?


「どうかしたかの?」


そんなコトを考えていると、仁王先輩に声をかけられた。


「いっ、いえ! なんでも…」

「そうか。 ならよかったぜよ。お前さんになんかあったら、俺が心配じゃき。」



…え?今、なんて言いました?
たしか、心配って…なんで私のコトで仁王先輩が心配するの?



…もしかして私、からかわれてる?


「あっ、あの、仁王先輩…。」

「ん?」

「…私のコト、からかってますか?」

「なんじゃ、いきなり。
お前さんが急に声をかけてきて、しどろもどろしとるから、ちょっと期待してしもうたぜよ。」


き、期待!?


「あの…」

「またか?」

「やっぱり、からかってません?」

「なしてそう思うんじゃ?」

「だって、話したコトもない初対面の女子相手に、そんな、気のあるようなこと…」

「初対面じゃなかよ?」

「えっ?!」

私は、入学したときから仁王先輩のことが好きだったけれど、話した記憶なんてない。

むしろ、好きな人と話したコトを忘れろという方が難しい。


「やっぱり気付いとらんかったか。」

「??」

「それは私にはよく分かりませんね。」

「えっ? やぎゅー!?」

びっくりしたことに、その言葉は、私が仁王先輩に一目惚れして、幼なじみの柳生に相談したときの柳生の言葉だった。


「って、ことは私が相談を持ちかけてた柳生は、仁王先輩だったんですか!?」

「そぅナリ。」

そう言って、仁王先輩はニヤリと笑った。

それと同時に、今までの私の柳生への言葉や行動を思い出し、すごく恥ずかしくなってしまった。


「忘れて下さい!」

「イヤじゃ。」

「…え?なんでですか?」

「聞きたいか?」

「ぜひ。」

「お前さんは俺が今から話そうとしていることが分かるかの?」

「分かってたら聞きませんよ?」

「…上等じゃ。なら、教えてやるぜよ。」

「やったぁ!」

「ただし、お前さんが俺にキスしてくれたら…の話じゃけど?」

「え…」

「いやか?」

「そんなことは…」

「なら、ほれ…」

そう言って、目をつぶってこっちに顔を出している仁王先輩を私は、不覚にも可愛いと思ってしまった。


でも、大好きな仁王先輩のことなら、何でも知っていたい。

それに、一瞬くらい、仁王先輩との距離をゼロにしたっていいよね。


例え、仁王先輩にはなんてことないキスだとしても、いいんだ。



私は仁王先輩が好きだから…



そして、私は精一杯の好きの思いを込めて、仁王先輩の唇にキスを落とした。







「俺もじゃ…。俺も、ずっと前からお前さんのコトを好いとぅよ?」

「う、そ…」

「嘘じゃなかよ。俺は好きなやつとしかキスはせんよ。」


そう言うと、彼は優しく笑って私にキスを落とした。



「愛しとぅよ。」


「私も…」







end…。

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