短編

□HBD
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「岳」

「何だ」
「今日は何日だ」


窓から不法侵入してきた女、さんは妙に上機嫌だ。


「そんなことより、何でお前は毎回窓から入ってくるんだ」
「お隣さんだから」


さんは家が隣で、コイツの部屋のバルコニーからここの窓がかなり近い。

だから、ただ単に一々外に出るのが面倒くさいのだろう。


「出不精か」
「そうだね」
「せめて否定はしろ」
「話逸れたんだけど」
「…」
「いや忘れないでくれる?今日は何日だ」


ちら、とカレンダーに目をやる。


「5月5日」
「yes!」
「!?」


5日?
…あ、今日俺の誕生日じゃん。



「youがhappyでbirthなdayだよ!」


どこぞの社長みたいな口調で、foryouとか言いながら袋を差し出してきた。


「無駄に発音いいな。ありがとう」
「でしょー。え、もう中見るの」
「…ダメなのか?」
「ダメではないけど…」
「じゃあ開けさせてもらう」
「じゃあ帰らせてもらう」
「あぁ。またな」
「うん」



袋の中に入っていた箱を開ける。

…ネックレス。

悪くないな。
勝手にセンスのない奴だと思い込んでいたが、意外といいんだな。


―こつん


「さん」

「うん、消しゴム千切って投げるの止めてって言ったよね」

「好きだ」

「あ、気に入ってもらえた?やったー」


…ダメだコイツ。
主語がいるのか。面倒なやつだ。



「さんが…名無しさんが好きだ」



「……マジですか」
「マジだ」
「待っ…今そっち行くから!」
「来なくていい」
「顔赤!可愛い!ちょ、写メるから!」
「来なくていい!ていうか来るな!」




Happyで
Birthな
Day

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