読み物 創作
□夢日記
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この国で一番美しい一本桜が見えたと同時に、生きた少女がそこにいた。
思わず足は止まり目を見開いていた。
自身の内側から血が騒ぐのが分かる。
無意識に頭の中によぎる知らない男の声。
―――――――…
貴方は私の主なる者
貴方を迎えにきました
ソル姫よ、再び我らと共に
…――――――――
戸惑いを押さえたたずむ彼女に近寄る。
いるとは思わなかったが彼女がソル姫なのだ。
でなければ、
これ程に心が揺さぶられたり懐かしいと思う訳がない。
踏み出した足音に気づいたのか彼女はこちらに目を向けた。
「誰…?生きて…る人…」
「俺はグレフェル。あなたを探していた。一緒にいこう。」
「どこに行くの…?」
表情が変わらない為、
わずかに変わる声音で感情を読みとらないといけない。
「君の帰るべき場所だよ。」
わずかに彼女の目が見開いた。
そして何か考える風に目を閉じ、少ししてゆっくり瞼を押し開け彼女はグレフェルの手を取った。
***