絵画の中で
□出会い
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『いらなかったの』
何度も言われた
母に
叔父叔母に
祖父母に
ただ一人 父だけは生きろと言った。
そして私が殺されそうになったとき
父は私を連れて遠い場所まできた。そのときまだ12だった。
父も亡くなり、私は一人で生活するようになった。
私がかろうじて
自分を見失わずに生きてこれたのは
父のおかげだった。
だから毎日の挨拶は忘れなかった。
「行ってきます。」
澄み渡る青い空は飛行機が落書きしたようになっていた。
「琉那!」
「あ、おはよう、由佳!」
友達の由佳は毎日私の家まで来て一緒に学校に行く。運動になるからと、送り迎えをいつも断ってきて居るみたい。
申し訳ない…;;
そしてこうやって普通に生活していると誰かに呼ばれたりする。
《琉那、おいで。》
それはテノールの綺麗な声で優しさを感じるのだ。私の名前を知っている上にどこかへ連れて行こうとしているみたいだった。
不安になっていても由佳に言うわけにはいかない。彼女も忙しいし…
父が亡くなってから聞こえるようになったから、不思議で仕方なかった。
*