novel
□七月七日
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「零っちぃっ! 遊ぼうぜー、ぎゃはははは!」
学校の宿題を終わらせる為、机に向かって勉強していると窓から出夢が飛び入ってきた。
……窓を開けておいて良かった。開けてなかったら割れてたかもしれない。
何て思ってたら出夢が手に持っているものが気になった。
「おい出夢、それ」
「ん、これか?笹だよ笹。妹から聞いたんだけど、今日は七夕なんだろ?」
「そうだけどよ、何で此処に持ってきてるんだ?」
「何でって、一緒に遊ぶからだよ」
出夢は首を傾げるもすぐに七夕いやっふーう、と笑いながら言った。
しかもご丁寧に短冊まで持ってやがる。俺は溜息を吐きながら諦めてシャーペンを置いた。
「願い事、願い事ー」
「いや、書くんならさっさと書けよ」
「んだよ、人識。冷てーな。急かす必要ねえだろ」
出夢は少しムスッとしたように言う。けどすぐにぎゃはは、と笑った。
俺は出夢の後ろにある窓の外を見た。すると天の川が広がっていた。
「おい出夢、見ろよ。天の川だぜ」
「ん?天の川?」
出夢は何それ?俺に聞いてきた。
「いや、七夕って言ったら天の川だろ。ほら、空見てみろよ」
そう言って窓を指す。出夢はそれに素直に従って窓の外を見た。
「うおっ、凄えっ!なぁ零っち何アレ何アレ!」
「いや、だから天の川だって。知らなかったのか?」
「そうだけど?そもそも妹に聞くまで七夕自体知らなかったしな」
何でもないことのように言う出夢。そうだよな、殺し屋として生きてきたような奴だもんな。
そう思うと何か感じるものがあるんだが、当の本人である出夢が気にしていない以上、俺が何かを言っても無駄な話だ。
「うわぁっすっげー!」
「かはは、傑作だな」
だから、七夕を楽しむくらいは、付き合ってやっても言いか。そう思った。
七夕を楽しむくらいは幸せを