短編集
□貴方がいうなら
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何なんだ…これは……
青ざめた表情、落胆的な心情。
一体どうしてこんなことになっているのか必死に考える。
「おはよ、雅(ミヤビ)。よく寝てたね」
隣に座る恋人が、うっとりとした笑顔でそう言って、俺の頬を優しく撫でる。
「こっのっ……!蛭間(ヒルマ)っ!なんだよ これっ!」
高校2年生である俺よりも5つ上の大学生だが、言葉遣いなんて今はどうでもいい(普段からタメ口だが)
噛みつくような勢いで、蛭間に言うが、奴はまったく動じていない。
涼しい笑顔で俺を見てる。
くっそ………っ!
殴りかかろうと思えば、殴りかかれる距離。それどころか車の前座席の隣同士。近すぎるくらいだ。
なのに殴るどころか動くことすら出来ない。
「とにかくこのチェーンを外せっ!食い込んで痛いっっ!」
そう俺は今、鉄製のチェーンで座席に縛り付けられている。
おまけに両手首も縛られて、背中がわに回されている。
「うん、後少しで解放してあげるから、まあ待ってて」
そう言って微笑まれる。
後少しっていつだよ!?
その笑顔に俺はすごく不安になった。この顔は何か変なことを考えている時の顔だ。
このまま解放されなかったらどうしよう…
もともと今日は、隣町に新しくオープンしたショッピングホールにいく予定だったのに…。
それが途中でよったコンビニから出た後、車に乗る寸前に何か変な薬を嗅がされて、気づいたらこんなことに……
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