その他・復活1

□ノスタルジアに溺れる
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一体どのくらいの間こうしているのだろうか。既に時間の感覚は狂ってしまっている。身包み剥がされた私は、白すぎるベッドの上で、未だ誰にも見せたことのない裸体を晒されていた。唯一の武器は勿論、シルクのドレスは無惨にも引き裂かれ、床に散らばっている。今の私に残っているものと言えば、この男が暇潰しに聞き出そうとしているファミリーの情報くらいか。そもそもこんな、男を知らない小娘なんかに娼婦まがいの密偵が務まるわけがなかった。つまり私は駒に過ぎなかったのだ。それを分かっていて今回の件を承諾した。そしてようやく、自分は愚かなのだと思い知らされる。

「どうだ、何か話す気になったか」

ザンザスはぼんやりする私の顎を掴んで、再びこちらの世界へ連れ戻す。彼は私が意識を手放すことを許してはくれなかった。気遣われることのない下半身は、既に処女を奪われた痛みを忘れてしまうほど乱暴に擦られている。ザンザスは衣服を着けたまま私を犯した。ネクタイだけは外している、と言っても、高そうなそれは本来の用途を外れ私の両手首を結わえているのだから、どの道あまり好ましくない結果ではあるが。

ゆらゆらと揺れる紅蓮が私を射抜く。あまりの羞恥にそれだけで達してしまいそうだ。恥ずかしい。本来敵対関係であるはずの男に身体を開拓され、それでも素直に快感を受け取ってしまう自分が恨めしかった。だから懸命に口をつぐんだ。快感に流され許しを請うて喋ってしまえば、それこそ全部なくなってしまう。最後の砦だった。

「い、や…ぁ、」
「もういいだろ。てめえは見捨てられたんだ。何を黙っておく必要がある」
「ふ、っん……」
「……強情だな。もっと酷くされなきゃ分かんねえのか?」

散々私をなじっていた唇が近付いてきて、首筋にがぶりと噛み付かれた。突然の刺激に、咽を反り返らせ苦痛を訴える。それ程強くはない痛みが、こんな状況下にいる私を苦しめた。傷だらけの指先が私の身体を隅々までまさぐる。もういっそのこと全て吐いてしまおうか。私はこみ上げる涙を溢れさせぬよう眉を寄せて、それでもなお嵐のような快楽と恥辱に耐えた。何を奪われたとしても、プライドだけは失いたくない。ザンザスが咽で笑った。

「俺の子どもを、孕んでみるか」

私は悪魔の囁きに身体を震わせた。「拷問」と名付けられた遊戯は、私を蝕み尽くすまで終わってはくれないのか。

ちょうど空が白み始めていた。



ノスタルジアに溺れる

(2008/8/27)


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