その他・復活1

□ここはもうすぐさむくなります
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ザンザスがいなくなってからもう随分になる。随分と言ってもまだ数ヶ月とちょっとだけれど、私にはとてつもなく長い時間のように感じられた。秋は人肌が恋しくなるなんて言ったのは誰だっただろうか。十一月の冷たい空気が、体の表面を撫で上げていく。ざわりと枯れ葉を鳴らす北風は、あの人の掌とは正反対にひどくひんやりとしていた。私はザンザスが今どこにいるのか知らない。生きているのかさえも分からない。クーデターの後ばらばらにされてしまったスクアーロたちと話をすることもできない。私は堅気の人間なのだ。ザンザスとは何もかもが違い過ぎた。あの人は毎晩ベッドの中で、愛していると囁き、火傷しそうなキスを何度もくれたものだ。彼の真意は、結局のところ分からず終いなのだが。


私はどんよりと重くのしかかる空を見上げた。私は九代目という人によって、遠くイタリアから離れたこの地へ連れて来られた。それは九代目なりの優しさなのだろうか。それでも私は毎日、あの人に会いたくて堪らないのだ。いつも我が儘を言わないよう、あの人の足枷にならないよう暮らしてきた。だから、最後に一つだけ、我が儘を聞いてはもらえないだろうか。この焼けつくような想いを、一体どこへやればいいというのだろう。



コートを着た人々が足早に歩き、街には楽しげな音楽が溢れている。私は何も知らないふりをして、人混みの真ん中で静かに泣いた。向かうあては特にない。ただ広すぎる一人ぼっちの家にも、浮き足立つ街にもいられず、コートのポケットに両手を突っ込んで歩いた。去年ザンザスからもらったシルバーの指輪は、少し錆び付いてしまった。この先にある細い路地をずっと歩いたら、どこか地の果てへと続いているのだろうか。私は赤くなった鼻をすすった。またあの師走の季節がやってくる。ザンザスのいる場所は寒くないだろうか。私の住む街は、もう少ししたら雪が降り始めるだろう。



ここはもうすぐさむくなります


(2009/2/10)


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