小さな青春

□*小さな青春*第3弾
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「ほ、ホントですか!?」

「あぁ」

「嬉しいです!津川先輩っ!!」


イラッ


ぴょんと跳ねて、ハートマークを飛び散らせ玲夜に抱き付く女子生徒。

その光景を食い入るように──というよりも食いちぎりたくて仕方がないという表情で睨みつける覗き魔二人。

今、二人の瞳には全てのモテない男子の怨念が、殺気となって宿っている。


「私、ホントに先輩の事が好きでっ!
中学の時から、ずっと…ずっと…!!
だから、ホントに嬉しくて…あぁ私どうしよう!」


イラッイラッイラッ

今や、二人は心臓が鼓動する度に、同時に憎悪が体中を駆け巡っている。


「先輩・・・大好きです・・・」







あの後の光景は、憎悪の感情と共に二人の心に深く焼き付いている。



「だから、あれは九美が勝手に・・・」

「関係ねェよ!!
拒否しようと思えば出来ただろーが!
つかウゼェな、もう名前で呼び捨てか!!」


帰り道──

近所迷惑も何のその!
恨めしい玲夜に向かって怒りをぶつけているのは勿論勇気。


「九美は中学の時の後輩なんだよ、陸上部で。
大体、覗きが趣味だったとは知らなかったよ“東さん”」

「テメェ…夜道を一人で歩く時ァ気を付けな…!」

「はいはい」


───


「つーか、お前、付き合ってる奴いたろ!」

「フラれたんだよ、春休みにな」

「ははは!雑魚が!!
何人目だよ!!」

「・・・覚えてない」

耳障りとでも言うように、玲夜は耳にイヤホンを付けた。

「バァカ!今回で9人目だ!!
モテるくせにフラれるとはバカだなお前は!
究極の!!」

「はいはい、バカでいいよ。どうせ勇気のバカさには誰も敵わないから」


この時程、勇気が勉強を真剣にやろうと思った事はなかった──



晴れて、玲夜には9人目となる彼女が出来・・・

モテない男達はまた一つ絶望を味わい大人の階段を一段登る。


登れど登れど先の見えない階段をいつまで登れば女神のいる頂上へ辿り着けるのか・・・

それがまた、モテない男達に絶望を与えるのだった──





第25話
□二兎を追う者、三兎を得る□

終わり




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